
里の秋
長く伸びた影を追う様に南信州の里山を旅していた。風が稲穂の香ばしさを運んでくれる…。
ここは長野県と静岡県そして愛知県の3県境に位置する天龍村だ。近年は、老年人口割合がもっとも高く、限界自治体になりつつある。稲作農家では刈り入れの一番忙しい季節だ。一人の農婦が懸命に稲を運んでいる。
世の中には、容姿の似た人間が3人はいると聞いていたが、まさに若き日の母を見た思いがした。
「ご苦労さまで〜す」
私は、いつものようにまんべんな笑顔をつくり、声を掛けてみた。「写真撮らせてください」
「まあ!恥ずかしい」
そう言いながらも、相手もつられて笑顔で返してくれる。
「本物の笑顔には力が有る」さらに爽やかさと安心感がある。
神様が人間だけに与えてくれた「最大のコミュニケーションツール」人の心の扉を開けてくれる。「手伝わせて下さい」と言って数十年ぶりに触れた稲穂に遠い昔がよみがえった‥‥
by 濱 覚 (2014.12.16)