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Topics / Photo Essay Vol.43「縁 側」

ひまわり

縁 側
 天空の地を下り秋葉街道を行く。谷を縦断するこの道は、その昔、火伏の神として知られる秋葉神社(浜松市)に向かう巡礼の道として賑わっていた。
 道路脇では、道祖神や庚申塔などの石仏までもが旅人を優しく迎えてくれる。海と山を結ぶ悠久の道だ…
 遠山郷の入口で黒光りの半鐘を付けた火の見櫓を見つけた。バシャバシャと撮影をしていると、畑で農作業していた老婆が何やら私に話かけてきた。
「そんなもん撮ってどうするん?」興味深げに機材を見ている。「私の娘婿も東京でカメラマンしているだに、大宮ってとこで」オイオイそれは埼玉だろ?って思ったけれど黙っていた。
「細江英公先生の弟子だわね」このような山間の集落の老女からその人の名が出た事に驚いた…。
「まあ、家に寄ってお茶でも飲んでいきなさんし」遠慮をする間もなくスタスタと鎌を持ったまま腰を丸めて先導し始めた。縁側に案内された。お茶から始まり漬物、お菓子、煮物まで出てくる。
「おばあちゃんはお幾つなの?」視線を低くして尋ねた。「87歳!数えの88だわ」ちょっとテレた物言いが可愛らしかった。7年前にお爺さんを亡くして、今はひとりで暮しているそうだ。ときどき近所の人が訪ねるくらいなもの…、人恋しいようにさえ伺えた。
 玄関には、古びたダイヤル式の黒電話が置かれ、奥の和室には、100インチも有りそうな最新の大きなテレビが存在感をもって鎮座していた。縁の下でコウロギが鳴き始めた。何故か急に心がせつなくなってきた‥‥by 濱 覚
(2013.10.17)