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Topics / Photo Essay Vol.34「冬の少年」

お茶の路

冬の少年
 奈良井宿は、木曽路11宿の江戸側から数えて2番目の宿場で長野県塩尻市に位置する。
 中山道六十九次の34番目である…。
 重要伝統的建造物として、当時の町並みが大切に保存され、今もなお、家々には、人が住まいし日常の生活が営まれている。江戸時代から曲げ物、漆器などの木工業が盛んである。宿場に沿うように東に奈良井川(源流は木曽川)が流れ、南に難所の鳥居峠がそびえる。
 「木曽は、まさに山の中だ。」都会のような公害や人害などもない。時がゆっくりと流れている。人影も少ない夕方、雪遊びする一人の少年と出会う事ができた。「僕…寒くないの?」
 そう声をかける私に少年は応える。「少しはネ!でも全然平気!」見かけよりかなり元気でそれに可愛らしい。
 「ちょっと、写真を撮っていいかなあ?」申し訳なさそうにお願いをした。「うん!いいよ」即座に快諾。「おうちはどこ?」そう尋ねる私に、一流モデルは由緒ある漆器店を指刺した。と…その時
 彼の祖父らしき人が出てきたので、(思わずドキッ!)
 「良く撮ってもらいなよ」不機嫌そうに言い放った言葉とは裏腹に、その目は、優しく笑っていた。
 「オイ! もうじき飯だぞ!」そう言い残し翁は、行ってしまった。
 都会では考えられない。私のような怪しい人間が大事な孫と…。
 しばらくしてから、大きな声で「お腹空いたぁ」と言って帰宅した少年に「入る時には、外で雪を払ってからって、いつも言っているでしょ!」叱る母親の声がした。
 もう一度 外に出て来た彼は、御座なりに雪を払い、「バイバイ」と言わんばかりに雪の付いた手袋を振り、戻っていった。
 家の中から微かにカレーの匂いがした。‥‥by 濱 覚
(2012.12.17)